「愛のためなら、世界の果てにでも行ける」日本に移住したロシア人女性のストーリー
国際結婚の家族関係、日本生活の苦労、子どもの教育、ステレオタイプの克服について、日本で幸せを見つけたロシア人女性エカテリーナ・モリヤさんがスプートニクの独占インタビューで語ってくれた。
「ずっとアジアが好きでした」
エカテリーナ・モリヤさんは、モスクワから900キロメートル離れたキーロフという小さな都市で生まれた。キーロフで製菓専門学校を卒業した後、商店で販売員として働きながら、カフェやレストランで専門を活かした仕事ができないかと定期的に職探しをしていた。エカテリーナさんの育った環境は恵まれたものではなかった。家族がアルコール問題を抱えていたのだ。辛いときには、幸せを求めて遠い魅力的なアジアに行きたいと夢見ていた。
子どもの頃からアジアの国々が好きでした。その国々の自然、建築、伝統衣装が魅力的でした。よく弟と一緒にジャッキー・チェンの映画を見ていました。叔父がファンだったのです。ケーブルテレビで一緒にアニメを見て、アニメの登場人物の絵を描くのがお気に入りでした。こうしたアニメを作っている国に行ってみたいという気持ちはずっとありました。桜も見てみたかったです。
エカテリーナ・モリヤ
あるとき、エカテリーナさんはインターネット上の共通の友人を通じて、島根県の小さな町で教師をしている若い日本人男性ケンタさんと知り合った。
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「最初はフェイスブックでやりとりをしていましたが、すぐにスカイプで会話をするようになりました。半年ほど経ったとき、将来の夫になる彼がロシアに来てくれ、私たちはついに顔を合わせることができました。それから半年後に私たちは結婚しました。
結婚式はサンクトペテルブルクで挙げましたので、ロシア式の結婚式でした。私の親戚と夫の両親は私たちのように自由に会話をすることはできませんでしたが、それでも言語の壁を越えてお互いに仲良くなり、今でもあの日のことを心温まる気持ちで思い出しています。私が来日したとき、ロシアの結婚式に行くことができなかった日本の親戚向けに祝宴を催しました。この祝宴は日本式でしたので、夫と私は日本の伝統衣装を着ました。とてもきれいでした!」

エカテリーナ・モリヤ
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「引っ越しを決めるのは簡単でした」

夫婦は夫の祖国で暮らすことを決めた。というのも、この時点ですでにケンタさんには定職があり、それを辞めたくないと考えたからだ。
日本に引っ越すことは簡単に決意できました。私はロマンティックな性格なので、愛のためなら、自分を犠牲にしても構わないし、必要ならば世界の果てにでも行くことができると、いつも考えていたからです。あのときは、何も怖いものはありませんでした。
エカテリーナ・モリヤ
当初、新婚夫婦はケンタさんの両親と同居していたが、暫くしてマンションに引っ越した。エカテリーナさんは最初の1年は仕事をせず、言葉の勉強と新生活への適応にすべての時間を費やした。

日本の家族はもちろん、ロシアの家族とは違います。日本の伝統や新しい家族の生活習慣に慣れるのは大変でした。けれど、夫の両親はいつも私に対して理解と善意と忍耐をもって接してくれました。そのことにとても感謝しています。日本では毎晩、お風呂に入ります。しかも、家族全員が順番に同じお湯を使います。日本人にとっては当然のことですが、私は最初、非衛生的な気がしてイヤでした。けれど、次第に慣れました。日本人は夏になると、特に女性は日傘をさし、つばの大きな帽子をかぶり、長袖の服か長い手袋を付け、ストッキングをはいて出かけることがほとんどです。私にはそれが信じられませんでした。というのも、日本の夏はただでさえとても暑く、むしろ服を脱ぎたくなるくらいだからです。けれど、夫の母は肌の白い私とても心配してくれて、いつも日傘を持って私の後を追いかけていました。」
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家庭内の苦労
「最初は「どうして?そんなの大変じゃない!」という思いをよく抱いていました。例えば、どうして床にホコリが落ちていないのに、毎日、掃除機をかけなければならないのか理解できませんでした。しかも、冬に毎日部屋の空気の入れ替えをするのは、ものすごく寒かったです。けれど、後になって、これは畳がカビやすく、ダニがつきやすいからだということが分かりました。」
スプートニク
家では何語で話しているのですか?お互いに理解できなくて困ることはありませんか?
エカテリーナ
一緒に暮らし始めるまでは、特に言語の壁は感じませんでした。私たちは主に英語で会話していました。結婚してから、私の語彙では足りないことに気づきました。おそらく、結婚後1年目が一番大変でした。
スプートニク
日本に引っ越したばかりの時、日本で最も驚いたことは何ですか?
エカテリーナ
なによりも驚いたのは、冬、日本の家の中が寒いことで、これに慣れるのに3年かかりました。また、大きな虫にもかなりビックリしました。ロシアでは虫が怖いと思ったことはありませんでした。ロシアの虫は小さいからです。日本の電化製品とその先進性にもとても驚きましたし、今も驚きは止みません。結婚する前、夫は日本で既にパソコンや、様々なゲームソフト、カメラ付き携帯電話を持っていたのに対し、ロシアではその頃、やっと自宅に電話がついたばかりでした。
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「子どもにはただ、いい人に育ってほしい」

1年後、モリヤ家には家族が増えた。生まれた男の子はテオと名付けられた。両親によると、この名前はどちらの言語でも等しく良い響きなのだという。
スプートニク
国際結婚の場合、子どもが生まれると、子どもと何語で話すか、どちらの文化を育むかという問題がつきものです。これについては、どのように解決していく予定ですか?例えば、子どもにロシアの物語を読み聞かせたりするつもりですか?それとも、子どもには完全な日本人に育ってほしいと思っていますか?
エカテリーナ
私たちには、どの文化を育むか、どの言語を教えるかという問題は生じませんでした。私たちは、子どもが両親の言語を二つとも覚えるのが当然だと思いました。というのも、どちらの国にも多くの親戚がおり、子どもはその親戚となんとかしてコミュニケーションを取らなければならないからです。もちろん、息子はずっと日本で育っているので、やはり日本語の方をたくさん覚えます。けれど、私はロシア語の本を読み聞かせていますし、一緒にロシアのアニメや映画も見ています。息子には二つの文化の良いところを学んでほしいと思います。息子が自分は日本人なのか、ロシア人なのかを決めることは必ずしも必要だとは思いません。ただ良い人間に、優しく、親切で、思いやりのある人間に育ってほしいです。
スプートニク
日常、1日をどのように過ごしていますか?
エカテリーナ
息子は今、一歳ちょっとです。ですから、多くの時間を息子と過ごしています。それに、家のこともやらなければなりません。日本語の勉強もこれまで通り続けています。最近は主に漢字の勉強です。自由な時間には、絵を描いたり、YouTube用の動画を撮ったりしています。
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「働き過ぎの日本人というステレオタイプは私たちには当てはまらない」
私たちはエカテリーナに、ロシア人女性として、また日本人を夫に持つ妻として、日常的に直面するステレオタイプについて話を聞いた。

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日本についてのステレオタイプ:
どうしてロシアでは、日本人女性は主婦だというステレオタイプが根付いているのか分かりませんが、私の周りの日本人女性はほぼ全員、働いています。しかも、男性と同等に働いています。私は、小柄な日本人女性が2階にある我が家まで冷蔵庫を運んできた姿を決して忘れることはないでしょう!たしかに、多くの日本人はとてもよく働きます。けれど、私の夫は必要がなければ残業しないようにしており、通常、同僚の中で一番早く退社します。
それにはとても感謝しています。また、子どもを病院に連れて行かなければならないときは、私は車の運転ができないので、数時間の代休をとって、病院まで送ってくれます。夫は仕事以外の時間をすべて私たちと一緒に過ごしてくれていますので、日本人は働き過ぎというステレオタイプは私たちには当てはまりません。

写真:galki/Flickr
もちろん日本人男性はロシア人男性とは大きく違います。日本人は女性との関係においてあまりロマンティックではありませんし、彼女にアプローチをするのが下手です。そのかわり、とても戦術的で、謙虚で、信頼できます。何に対しても責任感を持っていて、特に、家族を持つことに対してはそれが顕著です。

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ロシアについてのステレオタイプ:
私の日本人の友人はよく、私が寒がったり、とても厚着したりしていると驚きます。多くの人が、ロシアは冬が寒いのだから、私は寒さに強いと思っています。けれど、実際はそうではありませんし、むしろ逆であることがほとんどです。日本に住んで3年になりますが、一度も乱暴な扱いを受けたことがありません。日本人はとても礼儀正しい国民であり、それはウチの人間に対してだけでなく、外から来た人に対しても同じであるように思います。
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エカテリーナはこれからも日本に残るつもりだ。なぜなら、このは治安と保健医療のレベルが高いだからだ。子どもを保育園に預けられるようになれば、仕事にも就こうと考えている。
日本に引っ越した人には、また、日本以外の国であっても、間違いを犯すことに対する心の準備が必要です。そして、間違えたからといってガッカリするのではなく、ユーモアを持ってすべてを捉える方が良いでしょう。
エカテリーナ・モリヤ
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筆者
アナスタシア・フェドトワ

デザイン
アナスタシア・フェドトワ

マルチメディア
Sputnik, Ekaterina Moria,Oma teos,Flickr
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