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「厳しい寒さとロシア風の寿司が好き」 ロシア在住日本人にインタビュー
日本人留学生の池田カズキさんは、ロシアに住んでもう7年になる。この長年の滞在を通じ、ロシア文化に深い興味を持つようになった。ロシアのマロースと呼ばれる厳寒が好きになり、教会で鐘の演奏を習いはじめ、白系ロシア人移民の残したレシピをもとに料理を覚えたりと、その関心はロシア人よりも強い。「スプートニク」では池田さんにインタビューを行い、まずはロシア渡航に至った経緯からお話を伺った。
ロシア人は笑顔を見せない
池田さんがロシアに来たのは7年前、日本人兵の遺骨収集事業に15年近く携わっていた父親の仕事がきっかけだった。それまで池田さんはロシア語を勉強したことがなく、最初のうちは辛かったという。しかし、あるとき父親がロシアについて話してくれた内容が、池田さんを現在なおロシアに留まらせることとなった。
「僕が小さい時から、父はロシアの印象についてよく話してくれていました。話の内容は、ロシア人作業員との仕事の進め方などです。父曰く、ロシア人は笑顔を見せることがないため、作業員たちは初めのうちは険しく怖い、暗い顔つきをしていたそうです。でも最初の夕べを共にした後、彼らは善良で最良の友人となり、そのうちの何人かと父は文通やハガキのやり取りもするようになったのです。また、ロシアでは作業員の人々もラフマニノフや芸術全体のことを理解していると話してくれました。だから僕は子供の時から、ロシアに行ってみたいと思うようになったのです」
やがて池田さん一家はモスクワに住まいを移した。池田さんは現在、国立モスクワ大学の政治学部に在籍しており、流暢なロシア語を話す。(因みにこのインタビューも、ご本人の希望によりロシア語で行われた。)今のモスクワは外国人が増えたとは言え、彼にとっては故郷の街のようなものとなった。
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ロシアの第一印象を覚えていますか。
池田さん
最初に入国した時、空港で出口の場所を警備員に尋ねました。すると彼は手ぶりで場所を示しただけで、無愛想な態度だったのを覚えています。このとき、僕はむしろ嬉しく思いました。だって父がロシア人について語ったことが本当だとわかったのですから。
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ロシア語の習得は難しかったですか。
池田さん
いいえ。難しさよりも興味の方が勝っていたので。ロシア語の響きが好きで、楽しく学習しました。それにロシア語教育センターでは2人の素晴らしい教師に恵まれました。ロシア語の勉強を始めたのはロシアに来てからですが、何が習得の助けとなったのか、もう覚えていません。おそらく、同じ授業を受けていたグループのおかげでしょう。一緒に勉強するのが面白い仲間でしたので。それにロシア人の友達のおかげでもあります。彼らとのロシア語による交流で単語を覚えることができましたから。
「ロシア人に頼み事をするときは慎重に」
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異国でその国の人間となることは可能だと思いますか。
池田さん
時々、自分は完全にロシア人になったと感じることもあれば、そうでない時もあります。日本にいても自分が外国人だと思う時もあります。日本の生活から疎遠になり習慣を忘れたためでしょう。お答えするのは難しいです。
「ロシアに行く前、あるアドバイスを受けました。向こうでは人に依頼をするときには配慮すべきだと。ロシア人は自分の友人のためなら何だってする覚悟があるからだと説明されました。たとえ自分自身にお金がなくても、友人から100万ドルが入り用だと相談を受けたら、どこからかともなく調達してくるものだ、と。もちろんこれは誇張でしょうが、このような友人たちに嫌な思いをさせないように、頼み事をするときには慎重になるべきだと言われました」
鐘の演奏を学ぶ
池田さんは子供の時、プロを目指してバレエ・レッスンを受けていたという。しかし成長とともに関心の対象は変わっていった。バレエダンサーになりたいという夢は遠い子供時代の思い出になったものの、芸術それも音楽への興味は今もなお尽きることがない。現在池田さんが熱心に習っているのはピアノ、そして何と鐘の演奏だ。
「(モスクワの)ダニーロフスキー修道院で鐘の演奏が聴ける行事に、友達と一緒に出かけたのがきっかけです。鐘の鳴らし方を学ぶというのは、初めはこの友達のアイデアでした。彼女が受講可能な場所などの情報を集めてくれて、先生の電話番号も僕にくれました。でも最終的にレッスンに通うようになったのは自分だけでした。習い始めてまだ間もないので、小さな前進が大きなことのように思えます。2〜3年後には困難な壁に突き当たり、これまでやってきたことを放棄したくなるような時期がいずれ来るでしょう。でも僕はやめるつもりはありません」
ロシアで鐘を鳴らす場所といえば教会だけ、このため演奏が学べる場所を見つけるのにはかなり難儀したそうだ。なお池田さんはこの趣味を宗教とは結びつけていない。彼にとっては、音楽芸術の新しい様式に触れるための方法に過ぎないという。
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休日の過ごし方は。
池田さん
家にいて、ピアノを弾くのが好きです。これはモスクワでなくてもどこででもできることですが、もし一日をずっとジャズを弾いて過ごすことができるとすれば、自分にとっては理想的な日となるでしょう。
「ロシアではバレエやクラシック音楽は国民の間に広く浸透していると思います。でも日本ではこれらが高尚な芸術の一種とされる節があります。僕はそうは思わないのですが。日本の一般的な大衆を見れば、これらの芸術には全く無縁であるかのように感じられ、労働者たちがチャイコフスキーを知らないこともあり得ます。一方、ここロシアではあらゆる人からロシア人作曲家や芸術家の名前を聞くことができるのが、僕には嬉しいです」
ロシアの厳しい冬、そしてロシア料理について
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ロシアの冬はやはり厳しいと思いますか。
池田さん
時々つらいと思うことがありますが、寒さのせいではありません。冬の極めて短い日照時間に慣れることができないからです。でもロシアのマロース(厳寒)や冬、雪は好きです。マロースのときは、たとえ日照が弱くても太陽が出ていれば、雪がその光を受けて輝いて見えます。この景色を眺めるのが大好きなのです。
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ロシア料理は好きですか。
池田さん
はい。一番好きなのはオクローシカ(編集部注:冷製スープ)で、シー(同:キャベツを多く使ったスープ)も気に入っています。でも、自宅ではたいてい日本料理を作ります。新しい料理を覚える時間がないし、日本料理は僕が手早く作れる唯一のものですから。ただつい最近、ある白系ロシア人移民が書いた本に従って、シーの作り方を習得しました。
「日本料理店はあまり好みません。僕には高すぎるので。でもロシアでチェーン展開されている寿司バーは好きです。寿司バーでは、日本人には思いもよらないようなメニューに巡りあうことが時々あります。例えば、衣をつけて揚げた熱い巻物(ホットロール)とか。日本料理とは似ても似つかぬものですが、僕はこれが大好きです」
今後の進路
池田さんは、現在専攻している政治学には入学当初のような魅力を感じないそうだ。このため今後の進路はまだ決まっていない。しかしロシアに住み続けることは彼の計画の中にある。7年間に亘る生活で得られた多くの友人、習慣、関心事は、到底断ち難いものだから。
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筆者
アナスタシア・フェドトワ
デザイン
アナスタシア・フェドトワ
マルチメディア
エカテリーナ・ブラーノワ
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