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「ロシアのダーチャ」
スプートニクQ&Aのコーナーでは、読者のみなさんのご質問にお答えします。
ある読者から「ロシアのダーチャとはどんなものですか?」というおもしろい質問をお寄せいただきました。スプートニクでは、ダーチャとはなにか、どんな風に生まれ、なぜ必要とされているのか、くわしく見ていきたいと思います。
「ダーチャ」は、ロシア人の生活と文化に欠かせないものです。ダーチャとは、郊外にある別荘のことで、街に暮らす人々が都会の喧騒から逃れ、休息し、新鮮な空気を吸ったり、たくさんの仲間たちが集ったり、お祝い事を催したりする場所です。多くの人々は、別荘地に夏や冬に休息するための家を所有し、この場所を基本的に夏季の家庭野菜や果物づくりに利用する人もいます。
ダーチャの歴史

はじめてロシアにダーチャが建てられたのはピョートル1世の時代、18世紀の初めと言われています。「ダーチャ」という言葉は、「与える(ダヴァーチ)」という動詞が起源です。権力者が自分の側近に、彼らの功労に対して郊外の屋敷を与えていたことが、その後、ダーチャという呼称につながっていきました。

もちろん、当時のダーチャは貴族階級のもので、木材かレンガで建築され、きれいな花々が植えられ、手入れの行き届いた庭つきの宮殿のような建物でした。

19世紀になるとダーチャは、静かに休息するためだけの場所へと変わっていきました。そこでは文化的な暮らしが沸き立ち、舞踏会の開催、作家や画家、作曲家たちが集う場となりました。

ピョートル1世
ソチにあるスターリンの別荘
当時は、春に家族でダーチャに出かけ、街に戻ってくるのは9月の初め、秋になってからでした。その間、一家の主はたびたび仕事で街に出かけなければならなかったことから、たいてい別荘地は鉄道の通る線路沿いに位置していました。

20世紀の初めには、政府が労働者に休息用のダーチャを供給するようになりましたが、労働者の数が多くダーチャが足りなかったことから、一つのダーチャをいくつかの家族が一緒に利用するという状況でした。その後まもなく政府は再検討を行い、スターリンの時代に、ダーチャは学者や有名な作家といった秀でたものを持つ人たちに限って供給することになりました。50年代になると、一般の人たちもダーチャを買うことができるようになりました。

20世紀の終わり、ソ連経済の深刻な低迷と都市の食糧不足から、多くの人々が家族を養うために都市を離れ、別荘地で食糧栽培を行いました。

別荘の屋根
現在のダーチャ
現在では、ロシア人のダーチャ購入はますます進んでいます。建売のダーチャを購入する人もあれば、自分の好みに合わせたきれいなコテージを建てる人もいます。

ロシアでは、5月から9月がいわゆる「ダーチャのシーズン」で、人々は仕事を離れて休息したり自然を楽しんだりするためにダーチャに出かけます。多くの人たちは、夏になると野菜や果物、いちじくを栽培し、秋が近づき雨季に入ると、近くの森にきのこを取りに出かけます。魚釣りもダーチャでの楽しみの一つです。

別荘の眺め
通年を過ごすことのできる生活条件が整ったダーチャは多くありません。多くの別荘地には、寒いロシアの冬を快適に過ごせるよう暖房が設備された家がないのです。そのため、冬場はたいてい人々は街に戻っていて、別荘地は閑散としています。もちろん、年中いつでも利用できるように整備されたダーチャもありますが、そうしたものはすこし値段が高めです。また、多くのロシア人は、自分の別荘地にバーニャ(ロシア風サウナ)を建てています。冬の行事として人気が高いのがバーニャ通いです。

ロシア版サウナで使われる木の枝と桶







バーニャは、建物としてはあまり大きくはなく、中の温度は90~120度に達します。ロシア人はその蒸し風呂の中で体を蒸し、くつろぎ、休息をとります。高温の部屋の中に座り、蒸されながら、葉のついた枝を束ねた箒状のものでお互いにたたき合って体をきれいにします。そのあとはたいてい一気に野外に飛び出し、ほてった体を冷ますために雪の中に飛び込みます。
有名なダーチャと有名人
有名人が滞在したダーチャは今でもたくさん残されています。たとえばロシアの偉大な詩人プーシキンが利用したダーチャなどは複数ありますが、いずれも博物館になっています。同じように、ソ連の指導者スターリンが利用したダーチャもいくつか残されています。興味がある人は、そうした場所を訪れ、歴史上の偉人の人生についてさらに知ることもできます。

ロシアの詩人プーシキンの別荘博物館
今日でも多くの著名人は好んでダーチャで過ごしています。世界的に有名なフィギュアスケート選手のエフゲニー・プルシェンコは、何度となく自分のダーチャをジャーナリストたちに公開しています。プルシェンコによれば、彼はとりわけ「静かな狩り」(ロシア人はキノコ採りをそう呼びます)が大好きだそうです。
モスクワのセレブリャニ・ボル森林公園にあるダーチャ(別荘)




また、2017年の夏には、モスクワの超高級別荘地、セレブリャニ・ボル森林公園にあるダーチャの利用を在ロシア米国大使館に禁止したことが話題となりました。


ダーチャは、ロシア人の生活と一体のものです。環境の転換、隣人との関係、おいしくて体にいい野菜や果物、そしてきれいな空気…。多くのロシア人が毎年ダーチャに足を運ぶ理由は、まさにここにあります。
ロシアのダーチャ
さて、ロシアのダーチャについてさらにくわしく知りたい人は、以下のリンクでダーチャの醍醐味についての過去の番組をお聞きください。
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