2020年東京オリンピックが台無しになるかも!?その理由とは








7月24日、小池百合子東京都知事が2020年東京オリンピック開幕2年前を宣言した。前日に大会準備の進捗状況の査察を完了した国際オリンピック委員会は施設の建設スピードに満足した。しかし、メディアや世論は警鐘を鳴らしている。今年のような猛暑が2年後にも繰り返されるとしたら、東京は五輪を受け入れることができるのだろうか?スプートニクが主催者と参加者の意見を聞き、東京が天気に打ち勝つことができるのかどうかを調べた。
本番まであと2年
7月24日夜、東京スカイツリータウンは2020年のオリンピックに向けたカウントダウンの開始を一目見ようという人々でごった返した。記録的な猛暑にもかかわらず、イベントは、夜でも気温30度以上の屋外で開催されることになった。数十人のジャーナリスト、著名人、スポーツ選手、観光客らが、常に吹き出す汗を拭いながらセレモニーの開始を待った。

主催者はこれを見越してゲストらにオリンピックのマークが描かれた団扇を配り、周囲には冷風ミストを噴射する装置が配置された。しかし、人でごった返した中央のステージ付近では、冷風ミストも団扇も暑さの前に歯が立たなかった。
ジャーナリストらは、日没後も火傷しそうなほどに熱い路面に直に座らされた。多くのジャーナリストは作業をしやすいように、機械類を地面に置いたが、機械類はすぐに熱を帯びてしまい、故障し始めた。あちこちから、この暑さは本当にひどいという声が上がった。

この蒸し暑い夜は、舞台上でも天気が話題となった。東京オリンピック委員会の森喜朗会長は「2年後に(今年のような)この暑さが来るかどうかは大変な関心」と懸念を表明した。1人だけ暑さを気にも止めていないように見えたのが、小池百合子都知事だ。暑さに対して文句を言うこともなく、大きな笑顔でオリンピックまでの残り時間を示すカウントダウン時計をスタートさせた。
東京五輪が日本で最も暑い時期に行われることに多くの人々が驚い ている。ロイター通信が伝えるところ、 五輪開催時期は国際五輪委員会(IOC) の財源のひとつであるテレビ局に左右される。 テレビ局からは数十億ドルの放映権料が入るのだ。 7月末から8月初頭には通常、大規模な大会が行われず、 スポーツチャンネルは視聴者を失う。 もし五輪をより涼しい10月に移すと、米ナショナル・ フットボールリーグ(NFL)のシーズン開幕や野球の大リーグ( MLB)プレーオフなどに重なってしまう。 7月は視聴者が五輪だけに集中する絶好の時期というわけだ。 日本にはこの条件に合わせて調整し(東京五輪は7月24日〜 8月8日)、 選手と観客を熱暑から救う手段を探す以外の選択肢が残っていない 。
江戸流の暑さ対策
東京がどのようにして選手やゲストを異常な高温から守るのかについて、前日の記者会見で小池百合子都知事が英国紙The Guardianの記者の依頼に応じて説明した。

都知事はジャーナリストとゲストに対して、自らが環境大臣を務めたときに打ち出したCool Bizプログラムを丁寧に勉強するよう呼びかけた。このプログラムのおかげで公務員やオフィスで働くビジネスマンは夏季にジャケットとネクタイを着用しない権利を手に入れ、エアコンが消費するエネルギーも削減された。しかし、ドレスコードの緩和がスポーツ選手やサポーターを日本の灼熱の太陽から助けてくれるとは思えない。

小池都知事によると、オリンピック期間中、東京と都民にとっての主要な冷房手段は既存のミストスプレーになるという。つまりあの冷風ミストだ。道路のアスファルト舗装を破壊的な太陽光から保護するのは遮熱性舗装である。また、都知事は追加的な対策として、知事曰く効果的な江戸時代の冷房方法を紹介した。知事の説明によると、数百年前から打ち水の伝統があり、市民は夏の間、1日に2回、路上に水をまいてきたという。
極めて危険な競技
カウントダウン開始の数日前、東京オリンピック委員会は各種目の競技日程を承認した。各競技は暑さのピークを避けるため、通常よりも大幅に早く開始される。50km競歩は朝6時にスタートする。50km競歩は体力的にも精神的にも最も厳しい競技のひとつだ。選手が途中で、過熱と脱水のために意識を失うことも少なくない。小池百合子都知事によると、こうした競技が最も早朝に実施されるという。
東京オリンピック委員会の森喜朗会長は既存の対策に加えて、追加対策としてオリンピック期間中、日本の時間を1時間か2時間早めることを検討しているという。これにより、全ての競技をより早い時間帯に実施することができるようになる。 しかし、都知事は選手への暑さの影響に問題はないと考えているようだ。7月24日の記者会見で知事は次のように述べた。 「このところの東京、日本は本当にサウナの中にいるようであります。アスリートの皆さんは体を鍛えていらっしゃる。しかしその沿道で応援してくださる皆様方が体を十分鍛えているかどうかというのは一概には言えない。」

しかし、学者はこれとは逆のことを証明している。カリフォルニア大学とテキサスA&M大学は日本の研究者と共同で、東京の太陽がマラソンにとって危険かどうかを調べるための学術実験を行った。研究者らは長距離走と競歩のコースの状態を分析した。コースは皇居をスタートして、銀座方面へ曲がり、東京タワーまで下って、そこから浅草まで伸びている。

研究者の計算によると、コースの大部分は夏の涼しい日であっても「危険」あるいは「極めて危険」という評価になった。その理由は、影を作る木や緑がないことであり、それによって直射日光が選手に降り注ぐことになる。研究者らは、選手が常に日陰にいられるよう、すぐにでもコース全体に木を植えるか、コースを変更するかが必要だとして警鐘を鳴らしている。研究者らはまた、できる限り早い時間帯に競技をスタートさせるよう勧めている。
最高気温が30℃程度の日本の平均的な暑さの夏であれば、これらの対策も十分に効果を発揮するだろう。しかし、2020年に異常な猛暑が襲ったらどうなるのか、その答えは誰も知らない。
熱せられた東京スカイツリータウンのテラスには、ゲスト、観客、ジャーナリストのほかに、日本の各都道府県の代表者も集まった。彼らはそれぞれに自らの県を宣伝するイベントを行った。例えば、近畿地方の観光センターは来場者の注目を集めるためにパビリオンに氷のオブジェを設置した。驚くべきことに、このオブジェはこの夜を通して溶けることがなく、ほんの少し地面が濡れた程度で、描かれた模様もまったく薄れなかった。もしかすると、猛暑を避ける秘密は、近畿地方の氷の中にあるのかもしれない。猛暑対策を研究する時間はまだ少しありそうだ。
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