Shiba vs Tokyo Sushi Bar
日本食は一気にロシア人の注目を集めるようになり、今年はついに首都の心臓部にまで辿り着いた。モスクワのど真ん中に新しいレストランが2軒もオープンしたのだ。当の日本人も、ロシアの日本食レストランのレベルは大きく上がったと認めている。今回は、私たちの受けた印象について詳細にお伝えし、レストランの比較を行う。私たちの下す結論はもちろん主観的なものかもしれないが、間違いなくフェアなものである。美しくて美味しそうな写真がたくさん登場するので、どうぞご注意を!
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一騎打ちで勝利するのはどちらか?

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レストラン Tokyo: あたたかくて居心地のよい雰囲気のコスモポリタン・レストランで新鮮な魚を味わう
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最も力を入れているのはマグロ
モスクワで最大の品揃え
ロシア人向けか日本人向けか?
レストランでは、メニューを作成する際に想定するのは、まずロシア人客だという。例えば、日本では、魚料理(刺身、寿司など)の隣に熱い肉料理が盛られているのを目にすることはほぼ不可能だ。料理長のパーヴェル・リー氏は次のように指摘する。「ロシア人は馴染みのある料理を好みますが、同時にアジアっぽさや、アジアを感じさせるものを欲しがるのです。」しかし彼は、日本人には食の壁は存在しないと、経験上、確信している。
もちろん、ロシア人のお客様の方が多いです。しかし、日本人のお客様も来店され、敬意をもって接してくださっています。とはいえ、当初は、懐疑的な意見が多かったのも事実です。特に私の日本人の元同僚たちがそうでした。お客様の中には日本大使館の方々もいらっしゃいますし、いつも来てくださる家族もいます。日本人は、多くの料理が伝統的なスタイルから逸脱していることを理解した上で、これほどに新鮮な魚介類、正しく調理された米、高品質な日本の食材はモスクワでは本当にレアだと考えておられます。

パーヴェル・リー
料理長
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私たちは通常、例えば、海外のロシア料理レストランを良く思わず、パフォーマンスが不十分だと考えます。しかし、もしかすると、これは私たちのメンタリティによるものかもしれません。私たちは批判が好きなのです。外国人、特に日本人は、自国の料理を別の角度から見ることを面白いと感じる人々です。しかし、もちろん全ての人々を十把一絡げにすることはできません。皆、異なる経験や地位を持っていて、それゆえに感じ方も違うからです。

パーヴェル・リー
料理長
高級料理だけど、お手頃価格
レストランは現代の東京の多様性をすべて集めようと試みたが、それが驚くほどエレガントで、決して低俗なものにはなっていない。パーヴェルの創作料理は間違いなく高級料理のレベルに匹敵する物だが、価格は、モスクワの他の高級日本食レストランに比べて非常にお手頃に設定されていると言ってもいいだろう。また、レストランでは、当店の特徴は、醤油、味噌、酢や米などの重要な食材に安価な中国や韓国の類似品を使用せず、日本の製品のみを使用していることだと誇りを持って言っている。
日本食レストランというよりは、アジア料理レストラン

たとえば、ロールはやはり日本料理ではないのだが、そういうステレオタイプはロシア人の間に今も根強い、とパーヴェル氏は言う。さらにメニューは極めて多様だ:ヨーロッパ、さらにはメキシコ、ペルーやハワイのモチーフを思わせる料理もある。
レストランのコンセプトは最大限に日本らしく

日本食レストランには珍しい多様なメニューにもかかわらず、レストランで提供される料理は、バランスの良さが特徴の日本の味に最大限に近づけてある。

料理長に関する面白い事実:

1
人種は純血の朝鮮人
しかし、生まれたのはソビエト連邦。
2
日本に行ったことはない
しかし、日本食の料理人と、特にヨーロッパで一緒に仕事をした経験を豊富に持ち、国際研修にも参加した。直近の職場はモスクワのレストラン MEGUmi(約8年勤務)で、日本食のブランドシェフとして働いていた。
3
90年代から日本食に関わっている
90年代末、モスクワで最初にオープンした日本食レストランのひとつに就職し、それ以来、日本食をやると決めた。また、仕事では今の流行を、特にヨーロッパと米国のトレンドを追うことも忘れない。
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ロシアでは日本食の方が、韓国料理よりもずっと関心が高いと考えている
彼は、韓国料理はあまりにも味がはっきりしすぎていると考えている。そのため、ロシアの食市場ではそれほど大きく広まっていないのだと考えている。彼は日本人の食べ物を大切にする姿勢、食品を丁寧に扱う姿勢が肌に合っていると感じている。味の尺度で言うと、スパイスで味を殺してしまうことがなく、すべてが自然な味に極めて近いと強調する。
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レストランのメニューは2種類:
1種類目は刺身、寿司、ロール、サラダのほか、タルタル、ティラディート、霜降り牛肉のタタキなどのraw barで構成されている。
2種類目は肉、シーフード、野菜などのあたたかい料理で、グリルとオーブンをうまく調和させたジョスパーという器具で調理したものである。さらに季節ごとに変わる小さなメニューが常に用意されている。
料理人が勧める、まず食べてみてほしい料理:
最初に注文してほしいのが 「ティラディート」です。ハマチ、サーモン、マグロがあります。また、9種類の刺身のうちのどれか、そして、もちろん、パーヴェルがお客様のために様々な寿司を面白い調理法でご提供する「料理長のコンボ寿司」も注文していただきたいです。アペリティフとして、「ズッキーニ麺と鰻」はとても奇抜で、コンデンスミルクとイクラが使われていて、ピッタリです。「東京のロール」もオススメです。これは、キャビアを使った当店の創作ロールです。ジョスパー料理では、「和牛のストリップロイン」か「和牛寿司」か「帆立のフォアグラソース」、ブロッコリーまたはアボカドをお勧めします。 また「帆立のセビーチェ」や「ブッラータのスパイシーなキムチソース」といった面白い料理もあります。

アンナ・ヴォストリコワ
PRマネージャー
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本記事の著者は多くのメニューを実食することができただけでなく、料理長がマグロの面白い事実や日本での伝統的な調理方法を語り、大きな魚の正しいさばき方をデモンストレーションする、モスクワでは珍しいイベント「ビッグ・フィッシュ」も訪れることもできた。このイベントでは、誰もが自分自身を料理人のように感じ、自らの手で調理してみる機会を得た。
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Tokyoの総括的印象
魚の質
パーヴェルは、魚の鮮度が日本と違うことは避けられないと謙虚に語っている。なぜなら、魚介類は日本からモスクワまでの長距離を移動しなければならないからだ。しかし、著者は魚の鮮度のよさに驚いた。東京のレストランや回転寿司店でも、全ての店がこのような品質を保っているわけではないことを言っておきたい。
調理レベル
パーヴェルは日本に行ったことがないにも関わらず、日本で正しい調理法だと考えられているものに最大限近い形で料理が作られていることに、とても驚いた。たとえば、帆立のフォアグラソースの焼き加減は、内側は新鮮なままで、理想的である。多くの料理を食べていると、実際にはモスクワではなく、東京にいるような認知的不協和に陥ってしまうくらいだ。
おもてなし
レストランの居心地のよさは驚異的だ。パーヴェルとアンナと話をする中で、すぐにこのレストランが非常にレベルの高いおもてなしと顧客中心の精神に則っていることが分かる。顧客のテーブルに迅速に対応するウェイターの仕事ぶりも目を引くものがある。
レストランは2つの店舗を有している:1つめ(旗艦店)はレーニン図書館駅にあり、2つめはトゥルブナヤ駅の中央市場にあり、raw barだけを取り扱っている。

レストランの公式サイト

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レストラン Shiba: 柴犬と日本の詩を愛して
レストランの一般的なコンセプトについて
レストランはどうしてShibaという名称になったのでしょうか?
このプロジェクトを作ったレストランオーナーの アルカージー・ノヴィコフ氏が 柴犬を飼っているのです。レストランの名前の由来はそこからきています。あと、小さい場所という意味はロシア語の記事でよく出ていると思いますが、あれは僕が後付けで言っているだけです。マネージャーらが記者にレストランの名前の意味についてよく聞かれ、他に何か意味があるのかと聞かれるので、そういう「小さい場所」という意味が使われることになりました。

菊地政雄
料理長

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それと同時に、柴は小さな木、枝、雑木のことを指し、レストランのインテリアにも言及している感じがします。
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初めてレストランを訪れたお客様にShibaの特徴をすぐ感じてもらえるよう、最初にお勧めされるメニューは?
日本人のお客様でしたら、まず、ホウレンソウとキヌアとエダマメのサラダをお勧めします。それに加えて、寿司と刺身を注文してもいいでしょう。こちらの寿司やロールのサイズは、日本の基準から見ても小さいことを考慮しておく必要があります。日本ではお寿司をお腹いっぱい食べるために寿司屋に行くのが当たり前だとすると、こちらでは寿司はどちらかというと前菜のような感じです。当店のメニューは今のところ種類も少なく、1ページに収まる小さなものですが、今後、拡大していく予定です。

菊地政雄
料理長
オフィシャルサイトからのオススメ料理
レストランのサイトでは、「帆立のスパイシー焼き」「カニと鰻」「魚のアソートメント・ロール」「もずく」「本マグロのトマトソースと海藻のサラダ」「焼き甘鯛」「ちらし」といった料理が特にオススメされている。
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料理長に関する面白い事実:

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若い頃から料理人として働いている
菊地政雄氏は1991年に名古屋で生まれ、わずか16歳で料理人として日本料理店で仕事を始めた。
2
ほかのオファーを断ってモスクワで働くことを選んだ
あるとき、菊地氏はモスクワと香港という2つのオファーをほぼ同時にもらった。最終的に彼はモスクワを選択した。香港での仕事はそれまでに東京でやっていた仕事に近いと判断し、新しい経験を積みたいと思ったのだ。
3
もともとの専門は懐石料理
懐石料理は菊池氏がモスクワでやらなければならないこととはまったく異なっている。モスクワに来てまだ半年にもならないため、まだ多くのことが新鮮に感じられる。菊池氏によると、モスクワでは、日本で正しいと考えられているような、寿司屋は寿司だけを出すというのではなく、寿司屋でもラーメン、うどん、和牛などの様々な料理を提供することができるところが気に入っているという。訪問者の要望に応じて、唐揚げ、揚げ出し豆腐など、メニューにないものを作ることさえも可能だ。
4
ロシア料理が好き
好きな料理の中には、ボルシチプロフグレーチカ(蕎麦の実)が入っているという。ただし、ロシア料理を毎日食べることはできないとも認めている。なぜなら、ロシア料理には油が多すぎと考えているからだ。

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古池や
蛙飛び込む
水の音
松尾芭蕉の俳句のフレーズがインテリアに使用されることになったのは、ほかでもない菊地氏の提案だというのが興味深い。これにより、より心のこもった詩的な空間となったのは間違いない。
Shibaには、Tokyoと同様に、日本やアジアでは一般的だが、モスクワでは珍しいバーカウターテーブルがある。ロシア人には新しいこの時間の過ごし方は、モスクワに根付くのだろうか?
菊地政雄
Shiba料理長
ロシア人にはまだ、カウンターに座るのは慣れないことのようです。夜の時間帯で満席のときには、多くの方が仕方なくカウンターに座られますが、通常のテーブルが空くと、そちらに移動されます。こちらのカウンターテーブルは日本のものとは異なっているのです。日本では料理人までの距離が近いので、料理人と簡単に会話できますが、こちらのカウンターでは距離がかなり感じられます。
パーヴェル・リー
Tokyo料理長
ワールドカップ で、カウンター席は日本人だけでなく、世界中で愛されていることが分かりました。私たちも程度の差はありますが、ロシアでも良さが少しずつ理解されるようになってきています。やはり、料理人の手さばきを見ながら食事できるのは興味深いものがあります。
アンナ・ヴォストリコワ
TokyoのPRマネージャー
どの座席を好むかは、来店目的によると思います。家族で来店すれば、当然、通常のテーブルの方が快適です。私は、カウンター席は、面白いことに、通常のテーブルとは違い、ある種の一体感を作り出しているように思います。私はとても好きです!
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比較したShibaの総括的印象
魚と料理全体の質
残念なことに、魚の質を評価することはできなかった。というのも、何らかのよく分からない技術的理由により、料理人は試食用に魚を提供することができなかったのみならず、そもそも料理を用意することすらできなかったからである。それでもレストラン関係者の決定で、やっとのことで2つだけ料理を作ってもらえることになった。ホウレンソウとキヌアとエダマメのサラダ、普通の鶏うどんである。料理はおいしかったが、そこからレストランの特徴を知ることはできなかった。総じて、公式サイトでは使用される魚介類の鮮度が強調されており、どうやらShibaの方がTokyoよりも魚料理が2、3種類多いようだ。しかし、値段はやはりTokyoより著しく高い。
調理レベル
上記の理由により、複雑な料理の調理レベルを評価することもかなり困難である。総じて、菊地氏が懐石料理の経験を豊富に有していることを考慮し、写真を見たところでは、料理は本当に適切なレベルで調理されていることが推測できる。
おもてなし
レストランそのものは、かなり居心地はよかったのだが、PRマネージャーが事前に断っておいたはずの試食付きインタビューをきちんと準備していなかったため、主観的ではっきりしない印象になってしまった。
レストランはトヴェルスカヤ駅にある。

レストランの公式サイト
(今のところ、英語バージョンはない)
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Tilda