沖縄の基地反対運動:
軍国主義の高揚に反する戦い、そして安全で安心な生活への願い
2月1日、沖縄県議会は、在沖米軍が関与する数々の不祥事を受けて、米軍普天間基地の使用を即時中止するよう求める抗議決議を全会一致で可決した。その少し前、スプートニク特派員は沖縄を訪問し、取材を行なった。基地反対運動をする人々は何を要求しているのか、沖縄県は何をアメリカに求めているのか、沖縄の人々の気持ちはどうなのか。米国は北朝鮮の脅威から日本を守ってくれる存在?米兵の飲酒運転が多くて辟易している?それとも、定期的に落ちてくるヘリや部品にうんざり?果たして住民の中で、どの感情が勝っているのだろうか。
基地建設地・辺野古では何が起こっているのか?
沖縄県の中部、キャンプ・シュワブのゲート前では、辺野古への新基地建設に反対する人々が2004年から座り込みを続けている。ここでの活動は、規律あるタイムテーブルに沿ったものになっている。
8:00

海上から滑走路建設妨害の試み
9:00

ゲート前で座り込み
13:00

建設資材運搬のルートを防ぐ試み
抗議運動をしている人々の多くは、高齢の人々だ。ほとんど全員が、参加は初めてではなく、隣の市町村などからキャンプ・シュワブのゲート前まで、1週間のうち何日か通っている。遠く離れた県外から通っている人も少なくない。
抗議運動をしている人々の主目的は、取り得る可能な限りの手段で、辺野古の新建設を妨害することだ。午前中、彼らは滑走路建設の妨害を海上から行なう。日中は、自分達の身体でもって、建設資材を積んだ多数のトラックが行き交うのを防ぐ。

抗議運動は長い間行なわれているので、運動者と、機器の搬出入において安全を確保するための警官らは、親しい知人のようになっている。しかし警察は自分達の仕事をよく認識しており、行動が起こされたときには、年齢や性別、身体の状態に関係なく、運動者の腕や脚をとり、力でもってゲート前から遠ざけている。
沖縄県民は何を求めているのか?


「No democracy in Okinawa Japanese government ! 我々は表現の自由をうたう「憲法21条」で、沖縄の不条理を訴える。沖縄県民が怒りをこめて辺野古の新基地を止めようとしても、安倍独裁政権が、潰そうとかかっている。ぜひ世界中の、良心ある国々の皆様にこの実態を見て頂きたい」5人の警官によってたった今ゲートから遠ざけられた抗議活動者は、語気を強めて叫んだ。
AP Photo, Greg Baker
抗議運動者の中には、軍国主義時代の日本に生き、悲惨な沖縄戦を体験した人も少なくない。その一人である杉浦公昭さんは、米軍が沖縄に上陸したとき小学生だった。子どものときから彼は戦争を憎んできた。杉浦さんは、安倍首相の政策は、日本を「暗い時代」に戻してしまうと懸念している。「沖縄は日本本土防衛のための防波堤にされました。今、辺野古に基地ができると、基地が狙われるのは必然ですから、またここが戦争の『本拠地』になってしまいます。私は戦争反対、もう絶対嫌だと思っているから、座り込みに来るのです。私は命のある限り、後々残る人たちに、平和な日本・平和な世界を残していきたいのです。ロシアも含め、隣の国々と皆仲良くして暮らしていける世の中にしたいと願っています。日本は米国の言いなりになるのをやめ、真の独立をしなければなりません」
辺野古を訪問する前、スプートニク記者は、玉城デニー衆議院議員を訪問し、沖縄の基地問題について話した。
「普天間飛行場は一刻も早く使用をやめるという方向で、日米両政府は話をすべきです。辺野古に移転と言っていますが、新基地ができるまでずっと使い続けるのでしょうか?今すぐ普天間の部隊を県外に移すか、海外の基地に持って行ってほしいというのが、県民の要求です」

玉城氏
スプートニク:
沖縄における基地問題は数十年間続いていますが、なぜ現在に至るまで解決していないのでしょうか。
玉城氏:
日米の政治の責任であり、最も重い責任は日本政府にあると思います。他県と比べてなぜ沖縄にだけこんなに多く基地による被害があるのだろう、それを認めている政治はおかしい、と考えるのが普通です。「沖縄は米軍が土地を取ったから仕方がない」「本土から離れているから仕方がない」と言う人も多いですが、「仕方がない」というのはただの放置で、非常によくないことです。
スプートニク:
この問題はいつ解決する可能性がありますか。
玉城氏:
玉城氏:非常に不透明ですが、少なくともこの沖縄の現状をしっかり理解できる政府が立ち上がったときには、必ず解決できると思います。民主党が政権を取ったとき、米国に対して、「対等な日米関係を作ろう」という考え方の人たちはまだ少なかったと思います。そうして結果的に自民党にまた政権が戻ってしまいました。すると何も期待することはできません。今までどおり、沖縄に基地を置いておけばよい、という考えの政治ですから。
沖縄県民全員が米軍基地に反対なのだろうか?

朝日新聞、沖縄タイムス社、琉球朝日放送が2017年4月に行なった世論調査によれば、普天間飛行場の辺野古への移設は、「反対」が61%、「賛成」が23%だった。沖縄県民の54%が、日本政府は沖縄県に対し米国基地を配置することで格差のある対応をとっていると考えている。特に、60歳以上の回答者のうち70%以上が、日本政府は沖縄に対して格差をつけているとみなしている。そこへいくと、18歳から29歳までの回答者は、政府の政策に対する失望感が少なかった。
また、全体のうち33%が、米軍基地問題が、沖縄の最も重要な問題だと回答した。
しかし、世論調査と現実の選挙結果が、一致するとは限らない。2月4日に投開票された名護市長選挙では、自民党が支持する辺野古移設推進派の新人、渡具知武豊氏が当選したのだ。辺野古への移設反対を訴えた現職の稲嶺進氏は、三選できなかった。
米軍基地の何が問題なのか?
沖縄県の地図を広げてみると、そんなに面積が大きいとは言えない島々に、日本にある米軍基地のうち約7割が存在していることに目が行く。これらの基地は、沖縄県全体の約1割を占めている。その土地があれば住居などに役立てることができただろう。
基地賛成派が根拠としてよく用いるのは、基地は県民に雇用を提供している、という事実だ。しかし玉城デニー氏によれば、経済的な観点から言って、現在の米軍基地は沖縄県に大きな利益をもたらすものではないという。
「2015年時点で、県民総所得と米軍基地からの収入を比較すると、県全体の5%未満まで落ちています。基地があるから収入が入る、という生活ではなくなっています。米軍基地で働いている人もいますし、基地を貸している地主の方もいます。ですからゼロではありませんが、沖縄の他産業の方が伸びています。現在では、米軍基地は重要な経済のファクターではありません。基地はむしろ、沖縄県の経済の発展を妨害しています。より沖縄経済を伸ばすには、今米軍が使っている土地を返還してもらい、もっと活用していかなければいけないのです」

玉城氏
スプートニク:
なぜ普天間飛行場は、一番問題のある基地だと言われているのでしょうか。
玉城氏:
普天間飛行場にはオスプレイがありますし、周辺は全部住宅です。ここを使えば使うほど、周辺住民は不安を押し付けられます。ましてや周辺には約20の役所や教育機関といった公共施設があります。学校に米軍ヘリからの部品が落ちてきたこともあります。しかも辺野古に基地を作っても、結局この危険性は、直線距離でわずか30キロ先に移るだけで、同じ沖縄に残ります。基地が移れば危険もそこに移るのです。
スプートニク:
普天間飛行場の問題、辺野古への移転問題についてどうお考えですか。
玉城氏:
県民の多くはこれ以上、沖縄に新しい基地を作ってほしくないと思っています。普天間飛行場(の機能)は国外に持っていくという方向性で日本政府が米国と話し合いをするべきだと思います。しかし日本政府は将来、自衛隊のために、訓練する基地が欲しいので、辺野古にそれを作ろうという目的を持っているのではないか、と思います。「これは米軍のための基地で、米国と約束しているから私たちは止められません」というポーズを取りながら、辺野古に基地を作ろうとしているのではないでしょうか。
数字は多くのことを語ってくれる。2016年から2017年にかけて、米兵の飲酒運転により、日本人が死亡または重傷を負った事故は少なくとも6件あった。しかし社会の安全にとって直接、主たる脅威となっているのは、沖縄で行なわれている軍事演習、特に普天間飛行場で行なわれているものだ。2017年沖縄県で、米軍の飛行機・ヘリによって起きた事故は25件という最高記録を達成してしまった。特に反響を呼んだのは、小学校の校庭に戦闘ヘリの窓が落ちたことだ。結果、男児が怪我をした。沖縄県は住居の上空を飛行することを禁止したが、実際には、飛行は継続された。この下に示してあるのは、2018年1月、わずか1か月の間に起きた、米軍が関わった事件事故の一覧である。
沖縄を待ち受けるものとは?
スプートニクは、沖縄における基地問題が今後どう発展していくか、複数の専門家に予想を聞いた。
全国港湾労働組合連合会(全国港湾)玉田雅也書記長
「長期的に見れば、基地作り=戦争に協力した、ということになります。一般的に港というのは戦争が始まれば補給基地となり、前線に武器や食料を送ることになります。補給基地を叩けというのは戦争の常識です。そうすると港湾労働者は、兵隊でもないのに最初に犠牲になります。これは非常に切実な問題です。」
アジア太平洋研究センター日本研究部門長、ヴィタリー・シヴィドゥコ氏
「長年の時を経て、沖縄県民の運動というのは、政府に圧力を与えようとする「いつもの抗議」の形となりました。実際に状況を変えられる可能性があるとは、誰も計算に入れていないのです。 」
ロシアの政治学者・文筆家、ドミトリー・ヴェルホトゥロフ氏
「近い将来に沖縄から米軍基地が完全に撤去されるというようなことはあり得ませんが、基地を構成する中身が変わること、つまり部分的に基地が閉鎖されたり、土地が日本に返還されるということは起こるかもしれません。沖縄県では、長い歳月をかけ、46箇所の軍事関連施設が閉鎖され、基地が丸ごと返還されたケースもありました。
そうであってもなくても、沖縄県において米国は、自身の存在感をできるだけ長く保つでしょう。なぜなら沖縄は黄海をコントロールする重要拠点でもあるからです。米軍がどうしたら沖縄から去るのか?もしそれが起こるとしたら、大規模な戦争で敗北するといったような軍事的な理由か、政治的な理由、例えば原則的に外国に米軍を置かないようにするなどの政策導入によるものでしょう。」
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